第10章 ただ、好きなだけ ※
白樺湖で行われた合宿から帰ってきて数日が経った。
アオタケのみんなの毎日は相変わらず。
東京の暑さはやはりあちらとは違って体力を消耗するようで、こまめに休憩を取りつつトレーニングに励んでいる。
夕暮れ時。
ハイジくんの号令で練習は終了の時間を迎えた。
「よーし、今日はここまで!クールダウンしっかりー!」
「あっちー!腹減ったぁ!ハイジさん、晩ご飯何〜?」
ストレッチをしながらジョータくんが声を上げる。
「カレーだよ。そう言えばユキは夕飯いらないんだったよな?」
「ああ、飲み会」
言葉少なく返すユキくん。
今夜は私の誕生日デートを仕切り直してくれる予定。
デートの後は、そのままどこかへ初めてのお泊まり。
それがどこなのかは、ユキくんにお任せ…。
そんな私たちの事情を悟られないように、この後デートをすることはみんなには秘密だ。
「いいなぁ、飲み会!」
「別に飲み会くらいすりゃいいだろ。お前ら酒はまだ飲めねーけど」
「酒がどうとかじゃなくて女の子だよ!な?ジョージ」
「そうそう。女の子の集まる場所行きたい!」
ジョータくんとジョージくんがユキくんに絡む。
この二人、明るいし人当たりもいいし盛り上げ上手だし。
モテそうなものなのに、何故かいつも女の子との出会いを欲している。
「いいよなぁ、ユキさんはモテモテで。前も学校で女の子に言い寄られてたし!おっぱいが大きい色っぽい美じ…」
「バカ!ジョージ!!」
「はっ…!!」
揃って青ざめる城兄弟。
たっぷりの沈黙と、私に降り注がれるみんなの視線。
「待っ、待って!待って!違うって!ユキさんっ!!」
「何が違う…?ジョージ。てめぇ帰ったら布団叩き100回の刑だ…」
「そんなぁ!!アレめちゃくちゃ痛いやつ!!」
おっぱいが大きい色っぽい美人…。
そっか…。
実のところそんな想像はしていた。
ユキくんのこと、女の子がスルーするわけないもん。
「ユキくん、やっぱりモテるんだね」
「舞、そんなんじゃねーから」
「あー!僕らは先に帰りましょうか!ほらほら、ジョージたちも!」
気を利かせてくれる神童くんの言葉に、みんなはグラウンドを出ていく。
残されたのは、私とユキくんだけ。