第9章 夏の星座 ―ユキside―
花火を終えたあとは、揃ってコテージへ向かう。
ハイジと腹を割って話すことができて、正直ホッとした。
こんなこと本人に言うのは癪だから口にはしなかったが、あいつが恋のライバルなんて俺にしてみればこの上なく厄介なのだ。
いや、ビビってるわけじゃねーぞ決して!!
ビビっているわけじゃなくて、超絶面倒くせーことになると踏んでいたのだ。
箱根駅伝だって9人無理やり口説き落としたような奴だ。
目的のためなら手段を選ばない。
引くほどの執念、執着。
それが恋愛に向けられたらどうなっちまうのかと想像するだけでおぞましく、内心気が気ではなかった。
まあだからといって、舞を譲る気なんて更々なかったけどな。
「ユキーっ!!」
「…っ、勝田さん!?なんすか?」
背後からやってきた勝田さんは、俺の肩に腕を回す。
「頑張れよ!もう十分頑張ってるけどよ!」
「はい」
「あともう一個言っとく!お前になら、舞をやってもいいっ!!」
「ちょっと…っ!ごめんねユキくん、お父さん酔ってて!夕食の時飲みすぎたせいだから!」
「いやっほぉ〜いっ!お父様公認!」
「結婚式には呼んでねっ、ユキさぁ〜んっ!」
「きゃー!ユキさんが義理のお兄ちゃんになるの!?楽しそうっ!」
面白可笑しく食らいついてくる双子とハナちゃんをいなし、舞に目をやった。
困ったような恥ずかしそうな顔をして、うつむいている。
酔ってたって何だって、彼女の父親にこんなこと言われて嬉しくないはずがない。
勝手に盛り上がって先を行く勝田親子と双子。
舞にコッソリ耳打ちする。
「後でもう一回、外出よう」
「え?」
「舞がいる最後の夜だから。二人きりになりたい」
「……うん」
舞と一緒に見たいものもあるし、話したいこともある。
今夜、晴れててよかった。