第42章 新しい命
「…そんなことか。」
「そんなことって、結構重要なことじゃん!」
「いや、そうだけど、今から考えるような事じゃないだろ。」
「そうかもしれないけど…、でも!」
「だって、最初から完璧な母親なんていないだろ。育てていってくうちに母親になっていくんだ。それに、」
「それに?」
「お前は一人で親になるわけじゃない。俺も一緒になる。お前だけが背負うことじゃない。」
(あ、そっか。)
「だから、今は体を大切に産むことに集中してほしい。それから先は一緒に考えていけばいいだろ?」
「…そうだね。ごめん。」
「謝る事じゃない。心配になって当たり前だから。」
「うん…。」
「そして、ありがとな。」
「え?」
「俺の子を身ごもってくれてありがとう。」
「っ、うん!」
そこからはつわりが酷かった。
毎日のように吐いて、睡眠不足が続いた。
でも、幸か不幸か幸村の匂いがするところでは落ち着いて寝れた。
安定期に入り、6月。
一人の女の子が産まれた。
幸村と私のかわいい娘。
松と名付けた。
長く生きる松のように。
そして松のように平和が続くように。
そして、松が産まれて一年。
春日山城内、強いては私に、重大な事態が降りかかった。