第6章 Mission
「……破面!?」
髪をなびかせて振り返った死神は、その瞳に二体の異様な影を捉えると顔をみるみる恐怖に染めた。その瞬間、金縛りに遭ったかのような体の拘束がふっと解かれる。
……違う。彼女じゃない。
後ろ姿こそよく似ていたものの、その面持ちは彼女よりもずっと幼い少女のものだった。
「どうして破面がこんなところに……」
「あァ? てめえらがチョロチョロ嗅ぎ回ってっから来てやったんだろーが。……殺しにな」
ニィ、と猟奇的な笑みを見せるグリムジョーに対する死神の反応は早かった。即座に斬魄刀を解放し、身構える。その後ろでは一歩後れを取った少女もまた果敢に斬魄刀を構えていた。
「せいぜい楽しませてくれよ」
グリムジョーの呟きとともに衝突は始まっていた。
ガキン、と激しい金属音が鳴る。ふたりの男が一斉に振り下ろした斬魄刀を受けとめ、グリムジョーはそれを難なくはじき返した。
一方のウルキオラには残ったもうひとり、彼らの中のリーダー格らしき男が斬りかかる。自らの剣を繰りだすまでもなく、ウルキオラはその剣撃を右腕で止めた。
「――破道の三十一、赤火砲(しゃっかほう)!」
声高な詠唱が響くと同時にチリ、と左腕に熱がはしった。しかし少女が放った鬼道はウルキオラに火傷ひとつ残すことはなかった。
「そんな……」
青褪める少女の背後で「ぐあっ」と奇声があがる。
見ればグリムジョーに挑んでいた男のひとりが胸板を貫かれて口から血を噴いていた。
死神たちは理解する。
目の前に立ちはだかる相手との、絶望的なまでの力の差を。
「――菜月(なつき)! 逃げろっ!」
リーダーの男が決断をくだすのは早かった。
咄嗟に少女を振り返って退却を指示し、自らは再びウルキオラに斬りかかる。
「で、でも……!」
「俺たちのことは構うな! いいから行け!」
この凶悪な敵を前にしては、全員で戦線を離脱するのは極めて困難。
ならば年若いこの隊士だけでも。
無限の未来があるこの少女だけでも――