第3章 A Strange Death
「あ、やっと来た」
出逢いから一週間。いつもの桜の木の上に見覚えのある顔がいた。
「……死神というのはよほど暇らしいな」
「人のこと言えないでしょ。それより――はい、これ!」
軽い身のこなしで桜の枝から飛び降りた沙羅は、にこっと手の上の小包みを差しだした。
「……なんだ?」
「報告書のお礼するって言ったでしょ」
目の前に突きつけられた包みにウルキオラは訝しげな視線を向ける。
よくよく注意を払ってみれば、綺麗にラッピングされたその包みの中からはなにやら甘い香りが漂っている。恐らくは、ケーキだとかクッキーだとか――そういう類。
「………………」
いまいち状況が呑みこめず、ウルキオラはしばしその包みを手の上に置いたままの姿勢で固まった。その様子を食いいるように見つめていた沙羅は恐る恐る口を開く。
「やっぱり……だめだった?」
「…………?」
しばし間を置いて顔を向けると、彼女はますます不安げに瞳を揺らして。
「破面って、やっぱり……ご飯食べないの?」
的外れな問いかけに思わず包みを落としそうになった。
「……そんなわけがあるか」
「それか甘いの苦手だったり――」
「別に。そんなことはない」
「……じゃあ食べられる?」
「ああ……」
「ホント!? よかった!」
途端にぱぁっと顔を輝かせて歓声をあげる。面食らうウルキオラには構わず、沙羅は嬉しそうに明かした。
「実を言うとね、お礼するって言ったのはいいけどなにをすればいいかわからなくて困ってたの」
物をあげるにしても、相手が破面では普通の感覚で選んでもまず喜ばれないだろう。かと言ってなにが欲しいかなど見当もつかない。
散々悩んだ結果、「破面だってお腹がすくはず!」という結論に落ちつき今に至ったのであった。