第3章 A Strange Death
その後も緊張感の欠片もなく話しかけてくる女にため息まじりに立ちのきを要求したところ、今度は時計を見るなり飛び上がって「起こしてくれればよかったのに!」ときた。死神とは元来ここまで騒々しい生物なのだろうか。
虚圏の宮に控える主や彼の片腕の統括官を思い返してもその特徴はまったく当てはまらない。唯一浮かぶとすればあの人を食ったような口調の狐目の男ぐらいか。
そんな考えを巡らせるも束の間、今度はその死神の仲間らしき金髪の女が奇声をあげて公園に踏みこんできた。
……死神とは元来ここまで騒々しい生物らしい。
桜の大木の頂上に腰を落ちつけて騒がしいやりとりを眼下に見やれば、死神の女は気遣わしげにあたりをキョロキョロと見回していた。が、仲間の金髪に再度甲高い声で促され慌てて穿界門をくぐっていく。
――風変わりな死神だ。
ようやくいつもの静けさを取り戻した公園にひっそりと息をもらし、思った。
とはいえ敵の眼前で居眠りをかますなどという醜態を晒したのだ。もうここへ来ることもないだろう。
だが、安堵の色を浮かべてしばしの休息に入ろうとしたウルキオラの瞳に、その予測を裏切ることになるであろうものがとまった。
公園のど真ん中にまるで置き土産とでも言わんばかりにぽつんと残された、書類の束が。