第15章 大好き
葉月が去ってから半月たった春日山城では
相も変わらず謙信は朝早くから刀を振り回し鍛練に明け暮れていた
「謙信様」
「なんの用だ佐助」
「これを預かって来ました」
懐から出した文を謙信に差し出すと
それが誰からの物か感づき無言で受け取った
刀を鞘に納め文を片手に部屋へと歩き出した
部屋に入り襖を閉め文机の前に座り文を広げた
『拝啓 上杉謙信さま
暑い日が続いておりますがいかがお過ごしでしょうか?』
「此方はなにも変わりはない」
堅苦しい文章から始まり定型文の様な挨拶
それでも葉月から貰った文に自然と頬が緩む
『謙信さまより頂戴したお言葉のお返事をすべく筆を取らせて頂きました。
謙信さまの事は好いております
ですか、それ以上に私は家康の事が大好きなのです』
「・・・どんな言葉でも葉月の口から直接聞きたかったものだな」
腕からすり抜けて去って行ったあの時に葉月の気持ちは分かっていた
「葉月、俺は・・・・・」
『謙信さま』
「お前を」
『貴方は私の初恋の人です』
「・・・・・愛していた」
「幸せになれ・・・・・・愛しい葉月」