第8章 おいで?
暗くなる前に草原を出発したが
葉月の歩く速度にあわせていたため
後殿に着いた時には既に陽は沈んでいた
「ただいま」
「おかえりなさいませ・・・・・っ!!
い、家康様・・・あの・・・そ、其方の女性は?」
出迎えた臣下が家康の後ろに女性を発見し
驚愕の表情で恐る恐る尋ねた
「今日からここに住むからそのつもりで」
「は、はい!かしこまりましたっ!!」
臣下の男性は嬉しそうに意気揚々と駆け去っていった
「・・・こっち」
家康に促されて御殿の廊下を進んで行き
ある一室の襖を開いた
「この部屋使っていいから」
『ありがとうございます。家康さま』
「・・・・・家康」
"はい?"と疑問符で小首を傾げて家康を見た
「家康でいい」
『はい。では私のことも葉月と言ってくださいませ』
そっぽを向いてポツリと呟いた言葉に
葉月はにこにこと微笑んで答ると
"分かった"と一言だけ返事が帰って来た
その後女中が部屋に夕餉を運んで来てくれた
色んなことがあり歩き疲れていたこともあり
褥に横になった葉月はすぐに眠りについた