第4章 冒険
葉月が目を覚ました時見知らぬ天井が目に入った
『・・・・・?』
甘味やで味見をしてから記憶が途切れたことを思い出し
ゆっくりと体を起こし辺りを見回し状況を把握しようとした
あれから随分と時間が過ぎたようには見えなかったが
お腹の空き具合から一日ほどが過ぎているはずだと理解した
「お目覚めか」
『・・・・・どちら様でしょうか?』
声を掛けてきた男は"おや?"っと首をひねった
「泣いたり怯えたりしないのか?」
『その様な事をしても、状況は何も変わりません
それで私になんの御用があるのでしょうか?』
男を見据えはっきり言いきれば
男は顎に手を置き思案した
「ふむ・・・・面白い
お前にはある男の足止めをしてもらう」
『お断りさせてもらう事は出来ないようですね
努力はさせていただきます。文句は仰らないで下さいね』
豪華な着物や小物と共に女中が部屋に入って来た
男が退出し女中に着付けをして久しぶりに髪を結ってもらった
着替えが終わると葉月の前に御膳が運ばれてきた
警戒はしたものの素直に出されたものを頂いた
食事が終わったところに先ほどとは
違う男がやってきてどこだと尋ねると"寺だ"と言われた
促されまま階段を上り最上階へとやって来た
部屋に押し込まれ辺りを見回すと
柱に凭れる男が目に入り近づくが動く気配はない
『寝ているのでしょうか・・・・・っ!』
そこにいたのは会わなくなって五年
勝手に縁を切って数ヶ月の兄、織田信長だった
『何故ここに・・・・・』
そう言ってから思い出した
今日は天正十年六月二日それに男はここは寺だと言っていた
その時階下から悲鳴が聞こえて階段をつたって煙が上って来た
『・・・・・本能寺の変』