第1章 姫君は退屈
『暇だ~』
今は戦国時代この時代に産まれて早いもので十年
舘にある豪華な一室で暇をもてあまし
ボーッと庭を見つめる毎日を過ごしている
「息災か?」
『兄さま!おかえりなさいませっ!!』
元服して舘を出ていった兄さまは
月に一度だけ私に会うために訪ねてくれる
「土産だ」
『ありがとうございます』
手渡されたのは貝殻に入った紅と
この時代では珍しいガラスで出来たグラスだった
『とても綺麗っ!大切に使いますね
ところで今日は甘味は無いのですか?』
「ちゃんとあるぞ
お前はまだ色気よりも食い気が勝つか」
『兄さま、十歳に色気を求めないで下さいませ』
フフッと笑いながら兄さまから甘味を受け取った
「他の十の童とお前とでは出来が違う
お前なら十分に"女"として通じる」
『ご冗談をまだ私は嫁いだり致しません
それに嫁ぎ先くらい自分で見つけてみせます』
「この舘から出たこともないお前がか?」
『はい。必ず見つけてみせます』
「良いだろう楽しみにしているぞ」
ニッコリと微笑み断言すれば
兄さまも愉しそうに口角を上げたのだった