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イケメン戦国 《短編集》

第12章 「唯一敵わない人」/織田信長




「眠ったか……」

すやすやと気持ち良さそうに寝息を立てる
舞をじっと見つめながら目を細める。

今までこやつにとっては怒涛の日々だったのだろう。
戦のない時代から、
この戦の絶えない時代へと飛ばされてしまったこやつは、
偶然にも燃える本能寺で俺を助けた。

そこからは戦場に連れて行ったり、
『帰りたければ』という名目の元で囲碁で勝負をしたり、
顕如の手下どもを油断させるために、
湯治(とうじ)へ連れて行ったりとたくさんの事をさせてきた。

怖い目にも合わせたこともあったが、
いつの間にか互いに惹かれあっていたようだった。
初めはただの面白い玩具だと思っていたのに、
こやつの真面目で真っ直ぐなその姿勢に、
いつの間にか心を奪うはずが奪われていたのだ。

それからは『彼氏』という立場になった。
舞に天主へ来るように言い渡したとき、
世伽を命じたときに言われた言葉だ。

恋仲になってからは舞が傷付くのが嫌で、
戦場には連れていくことはしなかった。
今ではもう普通に連れて行っていたあの頃が不思議に思ってならない。
なぜ連れていけたのかと。

「貴様はいつも、誰かの為に頑張っていたからな」

いつもいつも誰かのことを最優先に考え、
自分のことなど後回しに行動して来たからこそ、
やっと落ち着けたのだろう。
そんな姿が見れたというのが嬉しかった。

自分の前では気張っていた気を抜いて、
ありのままの自分を見せてくれる舞が。

「(本当に、こやつには敵わないな……)」

ますます惚れていく自分がよく分かる。
今も尚手を握って眠る舞の姿が愛おしくてたまらない。
本人は無意識なのだろうが、
それでもそばにいて欲しいという表れでもあった。

「ゆるりと休め。そして…早く元気な姿を見せろ」

気持ち良さそうに眠る舞の額に顔を寄せて、
そっと優しく額に口付けた。
それからは残りの余った書簡に目を通すことにした。



【the end】
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