第7章 「何度も」明智光秀
春になりそうな時期。
少しずつ暖かくなってきたため、
着物を納品するのも楽になってきた。
今日もまた、
私は城下町を歩き回って納品作業をしてきたところだ。
「(そういえば赤色の糸が切れたんだっけ。
買って帰らなくちゃ)」
そう思い私は行きつけの店へと入っていった。
「あ。舞さん、いらっしゃい」
「あ、幸翔(ゆきと)さん。お邪魔します」
幸翔さんはこの反物屋の若旦那だ。
前まではお父さんが店を経営していたが、
歳が歳だったため、
息子さんである幸翔さんに代替わりしたそうだ。
「赤色の糸ってどこにありますか?」
「あ、赤色の糸はこちらに並べてあります」
私は「ありがとうございます」と言って、
ズラリと並べてある赤色の糸を色々と見比べて、
信長様に頼まれた着物に似合うような色合いの糸を見つけられたので、
幸翔さんにお代を出して帰ることにした。