第28章 真実と兄弟と、増悪と愛情と
シカマルが、セツナとカカシとミナトの三人の動きを同時に止める手段を考えてくれている。
普段なら、このまま彼の策が出てくるのを待ちそれに従っていただろう。しかし今は時間がない。
悠長にしていたら、あの中の誰かが死んでしまうかもしれないのだから。
私は咄嗟に叫んでいた。
『シュン!!』
「「「「!!??」」」」
あえて三人の中の誰かを呼ぶ事はせず、セツナの兄の名を叫んだ。
狙い通り全員の動きが止まったのは勿論の事、シカマルまでこちらを見て固まってしまった。
次の瞬間、セツナが私の目の前に現れた。おそらく時止めの能力を使ったのだろう。
でなければ、手練れの忍三人の包囲を掻い潜れるわけがない。
「お前!!どういうつもりだ、ああ!?」
これまでで一番、怒りをあらわにするセツナ。
私は胸倉を荒々しく掴まれ、足元が地面から少し浮く。
「エリ!」
誰か、もしくは三人が。私を心配して名を呼ぶ。
私は私で、シカマルとの約束を守る為に。セツナの目を四秒以上見つめないように気を配る。
『セツナ、聞いて。お願いだから…
このまま貴方達が戦って、セツナが例え勝っても負けても。どっちにしたって、
貴方は真実を知る事は永遠に出来ない!それで本当にいいの?私は、そうは思わない』
「真実 だ!?」
彼の腕に、更に力が込められる。息苦しさはとっくに襲って来ていた。しかし私は語り掛ける事を止めたりしない。
『セツナ、私は、逃げてた…。
お兄さんを亡くして、傷付いた貴方をこれ以上傷付けるのが怖くて…
自分の言いたい事我慢して、聞きたい事も我慢してた!でも…もう逃げない。
私は!全力で!貴方に向き合う!』
「…な、に言って」
セツナの動揺を突き、私を助けようと後ろの二人が画策する。しかしそれを、シカマルが視線で制した。私のやりたいようにやらせてくれるつもりのようだ。
『だからセツナ…貴方ももう、逃げないで』
「!!俺は逃げてないだろ!
実際にこうやって、兄貴の仇を討とうと二人に向き合っ」
『向き合ってない!向き合って、ないよ』
もう、誰の為に話しているのか分からない。セツナを救いたいから?はたまた 自分のエゴを押し付けたいだけか?
でも、もう賽は投げられたのだ。私は一度自分が決めた道を行く。