第2章 悪夢
【奏音side】
何処だ。此処は。
真っ暗なのに、"見える"部屋に私はいる。
真逆、これが太宰さんの言っていた、悪夢か?
もしそうなのであれば、気味の悪い冗談では済まされない。
あの、地獄の様な日々を過ごした部屋に酷似している。
家具の配置から、寝台の配置、何もかもが一緒なのだ。
《おや?もう居たんだね。》
聞き覚えの有る声が頭上で響く。
余りに現実的な夢で身震いをする。
《おーい、反応してよ。僕一人じゃ悲しいんだけど。》
再び声がするが、怖くて上が向けずにいると、よいしょ、と声が真横で聞こえた。
《降りてきちゃった。久しぶりだね、奏音。》
直ぐ右横には、見覚えの有る顔が。
『な、何で業が……』
動揺が隠せない。何で?死んだのでは、?
《僕が死んだと思ってた?ふふーん。
それは正解。確かに僕はポートマフィアの現首領である森鴎外に殺されてるよ。
森鴎外が君をあの部屋から連れ出しに来た時にね。》
矢張りそうでは無いか。
じゃあ目の前にいる彼は?
《僕は業。君の良く知る業だよ。》
有り得ない。
死者が甦るとでも云うの、?
《そろそろ脳内で話さないで口に出してくれても良いと思うんだけど…
死者は甦らない。それは絶対的で普遍的な事実でしょ?》
夢、だから業は喋ることが出来るの?
そうか、夢と現実は混同されない。
だから業は…甦った訳では無いんだ。
《ねぇ奏音。どちらが夢か、考えたことある?
ポートマフィアにいる君か、今僕と話している君か。どちらが夢でどちらが現実なんだろうね。》
『そ、そりゃ、ポートマフィアにいる私、でしょう?』
《そうかな?一概にそうとは云え無いんじゃない?
例えば…こう仮定したらどう?
人間は皆、もう既に滅んでいて、死んでいるんだ。でもみんな生きていた頃の記憶が忘れられないから、生きていると云う"夢"を見るんだ。
どう?そしたら解らなくなってこない?》