Happy Birth Tea(進撃の巨人)《リヴァイBD》
第5章 緊急事態
『くそっ…雪の降り方が強くなってきたな』
愛馬をいつもの場所に繋ぎ、いつもの道を通り角を曲がる。
『フユ……。商売根性があるのか寒いのにご苦労なこった』
少し先に小柄で愛しい姿が見えると、歩くスピードも上がる。
傘も差さずに突っ立っているフユにリヴァイは自分のコートをフユの頭に被せた。
『……リヴァイさん?』
手でコートを持ち上げると、頬や鼻先が赤くなった顔をしている。
リヴァイは自分の手袋をとると、フユの頬に手を添えた。
『頬冷てぇ…。雪も強くなってきた、今日はもう店閉めた方がいいんじゃねぇか?』
『そ…うですね』
リヴァイはフユの瞳をじっと見る。
こういう時いつものフユなら、寒くて暖かい紅茶を飲みたくて来るお客さんがいるかもしれませんと言うはずだと。
『………何かあったな?……それとも俺がこの間言ったことを気にしているのか?』
『ち、違うんです』
急に泣きそうになるフユにリヴァイは目を見開く。
『グロリア………閉店することになりました』
『……何だと?』
『少し前に商店街の責任者の方がお見えになったんです』
フユは自分の頬に添えられていた手に触れ、ぎゅっと握る。寒くて震えているのか、悲しみで震えているのかフユは分からなかった。
『元々私の確認不足で、出店料の高いこの場所にお店を出してしまったって言うのは、リヴァイさんもご存知だと思います。知名度が上がった商店街は出店料を更に値上がりをするらしいのです』
『おい、待て…その知名度を上げたのはフユのおかげじゃねぇのか?知名度を上げてもらって、それなりに集客力もあるグロリアを失うようじゃ本末転倒だぞ』
『それが…、この一角に大手のカフェが建つそうです。だから私の店がなくても商店街的には何にも不利にならないんですって!』
悲しいはずなのに笑って言うフユが健気でもどかしくてリヴァイは抱きしめた。
『そんなことを笑顔で言ってんじゃねぇ。今すぐ俺が行って何とかしてやる』