第9章 私と鬼と貴方
「それは本当ですか?!お館様!!」
「杏寿郎、残念ながら本当だ。」
半年に一度の柱合会議。
鬼殺隊のトップである柱達がお館様と謁見し、現在の鬼の状況や鬼舞辻について話し合い情報を共有する場。
一際大きい声を出したのは、炎柱である煉獄杏寿郎。
自身の継子である白羽雪が数ヶ月前に、任務中に行方不明となった件での進展だった。
白羽雪が鬼になった。
寝耳に水。
信じられない、信じたくない報告だった。
杏寿郎は尊敬するお館様からの言葉でさえ、素直に受け入れる事は出来なかった。
「雪ちゃんが鬼になんて…そんな…」
「残念だが、目撃情報もある。」
「おい、煉獄。どうするんだ?」
杏寿郎が雪を可愛がっていたのは、他の柱も周知していた。会議にこそ参加はしなかったが、良く連れてきては柱達に会わせていたからだ。
だからこそ、鬼には無慈悲な柱達も雪が鬼になってしまった事に衝撃を受けており、今まで通りに滅殺する!とはなれなかった。
「無論!自分の目で確認する!事はそれからだ!」
「杏寿郎、この件は君に任せるよ。雪の事を頼んだ。」
「御意!」
白羽雪。
杏寿郎の継子であり、炎の呼吸の使い手。
数ヶ月前に任務に出かけ、そのまま行方不明となってしまっていた。当時、杏寿郎も任務の合間を縫って探していたが、何の手がかりも掴めなかった。
ところが、半年経った今、雪の目撃情報が出てくるようになった。
ー隊服を着た鬼がいるー
ー日輪刀を持ち、炎の呼吸を使う鬼ー
紛れもなく雪の事だった。
お館様の許可を得て、杏寿郎は目撃情報のあった山間に来ていた。ここは昼間でも暗く、陽光が届かないような場所だった。
「(雪が任務に行っていたのは、1里以上手前のはず。何故、こんな遠い所で…)、!…何処にいる?!出てこ…い…」
後ろで気配を感じた杏寿郎が振り向くと、そこには日輪刀を持った雪が立っていた。
『師範…貴方にだけはお会いしたくなかった。こんな…こんな鬼になった私と……』
「本当に雪なのか?!…その目は…」
杏寿郎が見た雪の目には「上限 弍」の文字が刻まれていた。