第45章 トドカナイオモイ『後編』❥豊臣秀吉
秀吉さんがいない今。
それを読んでも仕方がないと分かっていても....
私はそっと文を開いた。
流れるようにそっと読んでいく。
「っえ....?」
でも、読んでいる途中に涙が溢れた。
止まることの知らない涙はただぽたぽたと棚の上に落ちていく。
「な、にこれ....」
秀吉さんが私に書いた文の内容。
それは、こんなものだった。
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華へ。
急にこんな文を書いてすまない。驚かせていると思う。
でも俺はお前に伝えたいことがあった。
結論から言う。
俺はお前のことが好きだ。
恋仲のやつがいるのに、と思うだろう。でもそれでも、お前の優しさや、強さに気づいて。どんどん好きになっていった。
祝言の時に急にいなくなったりしてごめん。あれは華のところに行っていた。そして、ひとつの約束をしてた。
まず華には俺がお前のことを好きなことを伝えた。そして、1ヶ月後、俺の故郷に帰ることも。
頼む。華。もしお前が俺を好いてくれているのなら、1ヶ月後に、俺の部屋まで来てくれ。お前に想いをちゃんと伝えたい。
でももし来なかったら、俺は今の恋仲の華と故郷に帰る。
お願いだ。お前のことを、信じさせてくれ。
1ヶ月後に、お前と会えることを願って。
豊臣秀吉
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「っ...!!」
涙が勝手に溢れる。
「う、そ....」
勝手に言葉も漏れる。
(秀吉さんは、私のことを、好きでいてくれてたの....?)
「秀吉、さん....!」
私はその文をかき抱くようにして抱きしめた。
かすかに残る秀吉さんの匂い。
それが優しく私を包んでいく。
「っ、私も、私も、好きだよ、秀吉さんっ....!!」
いくら呼んでも、もう届かない。
(なんでこんな馬鹿なことしたんだろう。どうして文を読まなかったのっ...?)
今更悔いてももう何も変わらないのに。
ただひたすら後悔してその文を抱きしめる。
「私も、好きっ.....」
涙声で呟いたその声は誰にも聞かれることなく。
夕方の淡い雰囲気の中に呑まれていった。
ひとつの想いを残して。
終。