第44章 トドカナイオモイ『前編』❥豊臣秀吉
「あ....」
私も咄嗟に口を抑える。
これじゃ告白のようなものになってしまった。
二人の間に気まずいような、それでいて甘いような空気が流れる。
そんななか、先に口を開いたのは私だった。
「っ、あの、今の言葉に深い意味は無くてっ....!!秀吉さんとなら祝言を挙げていいっていうのはっその、秀吉さんは常に私のことを見守ってくれてて、感謝してるって意味もあってっ....」
(あぁだめだ。これじゃ本当に好きですって言っているようなものだ...。)
その間ずっと黙っている秀吉さんの顔を見れずに思わず俯く。
すると不意に秀吉さんが私に手を差し伸べた。
それに顔を上げると口に笑みを浮かべている秀吉さんの姿。
「....ありがとな。また祝言の日程は追って伝えるよ。」
「え、う、うん....」
そのありがとなの意味がわからずに秀吉さんを見つめると、秀吉さんは誤魔化すように立ち上がった。
「さぁ、お前も針子の仕事の途中だろ。邪魔してすまなかったな。」
「あ...ううん。全然大丈夫。」
それにつられて私も立ち上がる。
そして針子部屋の前まで秀吉さんが送ってくれたとき、私はにこっと秀吉さんに笑みを向けた。
「ありがとう、秀吉さん。」
「!!」
その言葉にはたくさんの意味がこもっている。
私を助けてくれてありがとう。
私を責めないでくれてありがとう。
私を気にかけてくれてありがとう。
全部全部伝えられない言葉たちだ。
そして、一番伝えたいのは....
(好きになっちゃって、ごめんなさい。)
私が秀吉さんのことを好きじゃなかったら、きっと誤解が起きてもすぐに否定できるのに。
好きだから、否定できない。
(ホントに馬鹿なんだな、私。)
「おい、華....??」
「!」
考え込んでいたせいで秀吉さんの声でようやく我に帰った。
「っあ....ごめん、なんでもない。」
私は咄嗟に笑みを貼り付けて秀吉さんを見る。
秀吉さんも少しだけ私を見つめたあと、うん、とひとつ頷いてその身を翻した。
私もその背中を少しだけ見たあと、そっと針子部屋の中に戻った。