第30章 愛が貴方に届いたら❥明智光秀
「おい、小娘。」
そうやっていつも私のことを呼ぶ貴方。
絶対に、名前では呼んでくれない。
惹かれてはいけないと、危ないと分かっていたのに、その垣間見える優しさや、ふとした瞬間の真面目な顔に、もう恋をしてしまっていた。
好きになんてならなければ良かった。
最近私は良く思う。
好きになんてならなかったら、こんなに貴方のことを意識しなくても済むし、いちいちドキドキなんてしなくてもいい。
だけど...それは出来ないから。
好きになってしまったものは仕方がないから。
だから、せめて、貴方の心を私に見せてくれませんか?
あわよくば....
貴方の隣にいたい、なんて。
「おい、小娘」
「!」
ある、温かい春の日。
私は信長様から頼まれた大きい荷物を運んでいた。
すると、大好きな人が私を呼び止めた。
「光秀さん、どうしたんで....っ!」
私は慌てて振り返る。
しかし、その拍子に足がひっかかってしまい、ぐらりと前に倒れ込む。
(っわっ.,...!)
痛い衝撃がくると覚悟してぎゅっと目を瞑る。
だけど。
ふわっ
(...っ?)
その衝撃は痛いものではなく、柔らかいものだった。
それが光秀さんに抱きかかえられていると知ったのは数秒後。
「わ、わっ...!!」
光秀さんの腕にしっかりと抱きとめられていた私は慌てて光秀さんから離れる。
「っ、ごめんなさいっ...!大丈夫でしたか?」
すると光秀さんはにやりとこちらを見ながら、
「いいや?お前が俺のところへと飛び込んでくるとは思わなかったがな。」
「っ、ちがっ....!」
慌てて否定しようとするも光秀さんの顔がぐいっとこちらに寄ってくる。
そして低い甘い声で呟いた。
「...俺はそれでも良かったぞ?」
「っう〜〜!?」
そして顔から離れていく光秀さん。
だけど私の顔はもう蒸発しそうなほど赤く染まっていた。
「っ、また揶揄ってるんですか?」
「ほう、ようやく分かるとはな。お前もまだまだだ。」
「なっ....!」
光秀さんは別の意味で赤くなった私を見てまた笑った。