第26章 君と私の約束五箇条❥伊達政宗
でも、そこから政宗はあっさりと手を離してくれ、なんだ、と少し拍子抜けしてしまった。
そんな私を見た政宗は、
「なんだ、襲ってほしかったか?」
と、いつもの笑みを浮かべて言った。
「っ...!違うよ!」
思っていたことを少し当てられてしまった気がして顔がすぐに赤くなる。
「ま、政宗、私もう約束あるから行くね?」
そこで慌てて話題を変えた。
「あぁ、だから行ってこいって言ってるだろ?お前がいつまでもここに居るのが悪い。」
そう言うやいなや政宗はちゅっと私のほおに口づけを落とした。
「っ...分かったよっ...」
なんだかもっと恥ずかしい気持ちになった私はさっと部屋を出て、約束の場所へと向かって行った。
(春華ちゃんまだかな...?)
私はそわそわとして春華ちゃんを待っていた。
春華と書いてはるかちゃん。
私はその名前をひと目見た瞬間、すごく可愛い子なんだろうな、とかなり膨らんだ想像をしてしまった。
でも、いざ本物を見ると、その想像に負けないような可愛い子だったのだ。
目はまんまるくりくりとしていて、笑うたびに下がる目尻がすごく可愛い。身だしなみもきちんとしているし、悪口なんて一つも言ったことがないような、すごく良い子だった。
だからこそ。仲良くなりたいと思っていた。
でも、こうして待ち合わせをして仲良くなれたのはやっぱり嬉しい。
そう思って口元が緩んでいると...
「あ、華ちゃん!」
そんな声が聞こえた。
私はぱっと声の聞こえた方へと振り返る。
「あ!春華ちゃん!!」
にこにこしながらこちらへと歩いてくるのは、春華ちゃん。
その笑顔にこちらもつられてしまう。
「ごめんね〜、遅くなっちゃって...待たせちゃった?」
眉を下げてこちらを見つめる春華ちゃん。
その姿さえも可愛い。
「ううん!全然大丈夫!それより、早く行こ?」
今日の予定をすごく楽しみにしていた私はそっと催促する。
すると春華ちゃんも嬉しそうな顔でうん!と頷いた。
あてもなくぶらぶらと二人で城下を散策する。
「あ、最初に反物屋さん行く?」
「うん、行く!」
そんな会話をかわして二人で他愛も無い話をしながら目的の場所へと歩いていく。