第25章 消えない想いはいつの日か。『後編』❥明智光秀
そして、私もかなり忙しい日々を過ごしていた。
(後は、この書類をまとめてっと...)
私は家で今日の最後の仕事に追われていた。
しかし、その仕事ももう終わりかける。
(...よしっ!終わった!)
ようやく今手元にある仕事を全て片付けた。
時計を見るともう0時を指している。
(んーーっ、今日は頑張りすぎたかな。)
ぐーっと大きく背伸びをして、手を下ろす。
すると。
ごとっ
(...あ...)
何かが音を立てて倒れた。
背伸びをした手を降ろしたときに当たってしまい、中身が飛びててしまったのだ。
それは、あの時の、鞄。
(っ...)
それを私は壊れ物を触るような手つきで直そうとする。
だけど...
中に入っていた一冊の本が飛び出してきた。
そのタイトルには...
『イケメン武将トラベルガイド』
と、書かれていた。
その本に私は生唾を飲む。
これまで、この鞄には一切触れないようにしていた。
だから中身のリップやポーチだってそのままだ。
もし、中身を見たら...
光秀さんを、思い出してしまうかもしれないから。
でも、いざその本を見てしまうと、光秀さんがどうなったのか知りたくなった。
私はそっとその本へと手を伸ばす。
が。
そこで私はぴたっと動きを止めた。
ここで見てしまって何になるのだろうか。
光秀さんがどうなったかを知って私は何をするのだろうか。
何故かそこに嫌な予感を感じ、私はぱっとその本を鞄の中へと直した。
そして、ベランダに出てそっと外を眺める。
外にはまんまるな月が光り輝いていた。
あぁ、どこかあの人の面影があるな、なんて考えて、私はそっと呟いた。
「また、来世で会えますように。」
そう言うと月が一層輝きを増して、私を見つめた気がした。
まだ、私と光秀さんの物語は終わりじゃない。
これから、二人で紡いでいくのだ。
来世だって、来来世だって、光秀さんと一緒になってみせる。
どこか熱い雫を頬に感じながら、私はそっと目を閉じた。
いつの日か、愛した人を思い浮かべて。
終。