第20章 桜記念日『後編』❥真田幸村
はあっはあっはあっ、
そんな自分の息づかいが聞こえる。
早く、愛しい人に会いたくて、息が切れても走り続けた。
そして、何故かその人に初めて会った、あの桜の木の下にその人が来ると。
証拠もないのに確信した。
はぁ、はあっ、はあっ
あの場所には、まだつかない。
そんな自分がもどかしい。だけど心と体の速さは違う。心は先へ先へともう行っているのに、体は思うように動かない。
____早く、逢いたい。
1年も会えずに、ずっと耐えてきた。
きっとそれが、今日叶うのだ。
だいぶ走った頃、桜の木が見えてきた。
そこまでくると更にスピードを上げる。
会いたい、会いたい、会いたい、
早く。
その一心で走り続けた。
そして、桜の木の下まで来ると。
自分と同じように息を切らした愛しい人が、前に立っていた。
どくん、と、ひときわ大きく心臓がなる。
でも、それと同時に温かい気持ちも流れ込んできた。
そして。そんな愛しい人の名前をそっと呼んだ。
「幸村」 「華」
二人とも、そっと微笑む。
愛しい人に会えた、二人の幸せと、嬉しさが、この空気を満たして。
桜が、二人の出逢いを喜ぶように、
花びらを降らせた。