第19章 桜記念日『前編』❥真田幸村
「なぁ、あの頃のこと覚えてるか?」
「あの頃って?」
「俺とお前が、初めて会った日。」
「あぁあの日は...」
「「桜記念日」」
「だよね?」
華が笑う。
「あぁ。」
俺はその笑顔を見ながら、少し昔の事を思い出していた。
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(くそっ...!!)
幸村は、自分の不運を呪った。
(なんでこんな時に...)
少し遠くの領地に来ていた俺はいきなりの雨に降られてしまった。
走りながら大きくため息をつく。
しかし、ある用事できていた俺は野原にいた。
周りには何もない。
(どうすんだよ...)
今から戻ったところでかなりの時間がかかる。
また大きくため息をついたときだった。
幸村の目に何かが飛び込んできた。
遠くに、桃色の木が見えたのだ。
(あそこで雨宿りできる!)
咄嗟に思いついた俺はそこまで全速力で走った。
(はぁ、はぁ...)
ようやく木の下に来ると、俺はその木を見上げた。
(桜...か。)
その木は桜だった。
今が季節だろう。
綺麗に咲き誇っている。
そんな桜をあぁ、綺麗だな。くらいに眺めていたその時...
「うわぁ、綺麗...」
ふいに、そんな声が聞こえたのだ。
(!?人がいたのか?)
俺はその声が聞こえた方へと顔を向ける。
と、同時にざぁぁと、風が吹いて桜が飛ばされる。
その桜の中に、その女はいた。
(っ...!!!)
一瞬だった。
「っ!!!」
向こうも驚いたように目を丸くする。
そう。
俺たちは、お互いに一瞬で恋に落ちたのだ。
それが、俺たちの初めての出会いだった。