第17章 可愛くなりたい私とかっこいい君。❥豊臣秀吉
「っあ、ごめん、すぐ拾うね。」
そういって笑いながら拾おうとすると...
秀吉さんが私の腕を掴んだ。
「...」
秀吉さんが私を見つめる。
とても、悲しそうな目で。
(どうして、そんな顔するの?)
私は、秀吉さんに、可愛くなったなって言ってほしかっただけなのに...
そこで秀吉さんが口を開いた。
「華...」
そっと私の名前を呼ぶ。
「なに...?」
私が応えると、
秀吉さんは卵がゆをどけて私をそっと抱きしめた。
「っ...?」
突然のことに驚くと、
「...俺は、お前のそのままが好きだ。」
秀吉さんが私に語りかけた。
(っ、やっぱり、秀吉さんは私のそのままを好きになってくれたんだよね...)
そのまま秀吉さんが言葉を続ける。
「お前が考えていた事、少しだけだけど、分かった。お前は...町娘のせいでこんな事になったんだろ?」
(っ、)
すぐに当てられてしまった。
どうして分かるのだろうか。
そんな私の様子を見た秀吉さんが眉を寄せる。
「図星...か?」
何も言えずに俯く。
「お前が眠ってる間、少しだけ街に出かけた。そこで、町娘が駆け寄ってきたんだ。それで泣いて謝ってきた。恋仲の人に酷いことを言ってしまった、と。」
(え、)
その言葉に目を見開く。
(あの子が、謝ってきたんだ...)
根は良い子なのだろうか。
「それで、その子から話を聞いたんだ。それでお前がこんな事になった理由が少しだけ分かった。」
そして、すべてを分かった目で私を見つめる。
「お前は、お前のままでいいんだ。変わろうとなんて、しなくていい。」
そこで秀吉さんが抱きしめる力を強くする。
「っ、お前は...俺の全てなんだ。だから...頼む。お前は、お前のまま生きてくれ。」
(秀吉、さん)
秀吉さんの言葉が汚れた心にすうっと浸透していく。
私が、私に戻っていく気がした。