第17章 可愛くなりたい私とかっこいい君。❥豊臣秀吉
秀吉さんは、かっこいい。
それは、誰もが認める事だ。
城下に出てもいつも町娘に囲まれる。
顔立ちもそうだが、立ち振る舞いだってかっこいいんだからモテないわけがないだろうというくらいだ。
そんな人と、私は恋仲だった。
でも、私は可愛くもないし、気の利いたことを言うこともできない。
だから、可愛くなりたい。
秀吉さんの隣に、並べるように_____。
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私は秀吉さんと城下に散歩に来ていた。
秀吉さんのお仕事が落ち着いたから二人で休憩も兼ねて遊びに来たのだ。
「欲しいものがあれば何でも言えよ?」
秀吉さんが私に言った。
「ん〜欲しいもの...」
あまり考えが浮かんでこなかった私は頭を抱える。
そんな様子を見て秀吉さんが笑った。
「ははっ、お前はほんとに欲がないんだな」
秀吉さんがぽんと私の頭に手を乗せる。
(っ、だって欲しいものはもう手に入ってるもん。)
私がほんとにほんとに欲しかったもの。
それは、秀吉さんだ。
もう恋仲になった今、これ以上望んだらバチが当たりそうだった。
でも。
「あ、秀吉さんだわ!!」
「ほんとだ!」
「私が作った着物着てもらわなきゃ!」
「何いってんの、あたしが先よ!」
そんな声が聞こえたかと思うと、
秀吉さんはまたたく間に町娘に囲まれた。
まるで私なんて見えていないかのように。
「秀吉さ〜ん、私の着物受け取ってぇ!」
「いや私の着物のほうが良いわよ!」
「今度お茶なんてどうですか!!」
秀吉さんは一気に喋る町娘をまぁまぁと宥める。
「すまんが、今は華...恋仲の奴といるから、また後でな。」