第16章 キライキライやっぱりスキ❥徳川家康
するとさらに華が俺の顔を覗き込む。
「ねぇ、いえやすー?」
その声でやっと俺は現実に帰った。
「どうしたの??」
と華が言うが、
「なんでもない」とだけ答えると華はふーんと俺の顔を再度見たが、あまり気にしていなさそうだった。
そして、その後、
俺と華は手を合わせた。
「「いただきます」」
と、同時に華が煮物をぱくりと口に入れる。
まさに一瞬だった。
気づいたら華の口の中に煮物が入っていたのだ。
「え、あんた食べるの早すぎじゃない?」
俺が呆気にとられていると、
「っ、だってお腹空いてたんだもん!」
と華が言い訳をした。
その言い訳があまりにも直球で俺はふっと笑ってしまう。
「ふふっ、なんだよそれっ...」
俺の笑いに気づいたのか華も笑顔になっていた。
そしてだって本当だもん!と更に付け加える。
そんなふうに俺と華の話は尽きることはなかった。
むしろそんなわちゃわちゃの掛け合いがすごく楽しかった。
そうやって楽しく食べていると、時間はあっという間だ。
すぐに椀の中身はすべて空になった。
二人で手を合わせる。
「「ごちそうさまでした。」」
そう言ったあと、本当ならすぐに下げてもらうのだが、この時だけはまだ華を返したくなかった。
それは華も一緒だったのか華もその場を動こうとしない。