第4章 そして過去へ…
執事に連れられ、ある部屋の前に来た。
「少々歩く事になりますが、よろしいですか?」
私が頷くと、執事はその重厚なドアを開けた。
「…これは?」
部屋の中は光りが溢れ、何も見えなかった。
「ついて来て下さい」
執事はそう言って光りの中に入っていった。
私は慌てて追い掛ける。
「この光りは何なの?」
「この部屋は“時の部屋”と申します
この光りは時間の流れそのものでございます
奥に行くほど過去へ遡る事になるのです」
執事は説明しながら奥へ進んで行く。
「ねぇ、貴方達って何者なの?神様?」
「その質問にはお答えしかねます」
執事は首を横に振った。
「じゃあ、さっき主さんに、何て耳打ちしたの?」
「それは…」
執事が始めて動揺したように見えた。
「…我が主は彩奈様に命を救われたのです」
あまりにも意外な答えだった。
「…はあ?私そんな事してないわよ」
「主は人の姿をしていなかったので、彩奈様には分からなかったでしょう
主は一年のほとんどをこの館で執務をこなしておられ、外出するのは年に二回と決められております
その時に彩奈様に助けられたのです」
私はいくら考えても覚えはなかった。
「…人の姿じゃないって動物か何か?
それって本当に私?」
「間違いなく彩奈様でした
それから主は彩奈様の事を気にかけ、今回恩返しする事となったのです」
私は全く身に覚えがなかったが、そうじゃなければこんな事にはなっていないのだろう。