第10章 人生も人間もバグだらけ
新雪に足跡をつけられた様な想いだった。
陰に咲いた白い美しい花を、いつまでも見ていたい。
陽の下で綺麗に笑う顔を見てみたい。
一目惚れだった。
晋助、と名前を呼ばれるだけで心臓が跳ねた。
その瞳に一瞬でも長く自分が映っていたかった。
初めて会った時は首を振る事でしか意思疎通の取れなかった彼女。話していくうちに段々と言葉数が増えていくことがどうしようもなく嬉しかった。
だが彼女が自分を見ていない事は、痛いほど知っていた。
ずっと見ていたから分かった。
あの野郎を見る彼女の瞳の色を今でも忘れない。
いつも何も反射しないその瞳が、奴を映す時だけ薄く紫がかったそれが濃くなる。四人でいても、彼女が見ているのはあいつだった。気に食わなかった。
少しでも良い。
俺の方を見ろ。
自分のやった花に気を取られる彼女の手を引いて、どこかへ連れ去ってしまいたい。二人でいられる場所へ。
彼女が夕日に連れ去られた日。
銀時からもらった花に笑っていた。
自分には見せてもらえなかった顔。
どうやったって、あいつには敵わなかった。