第7章 キャッホーな奴には少し早い待ち合わせ時間を教えておけ
「…まさか保護者同伴デートとは思わなかったな。」
「いや、こいつらは気にしなくていいから。」
「いやいやいやいや、デートってなに??仕事だって言ったよね??鬼兵隊と仕事だって言ったよねぇ?!」
阿伏兎が頭を抱えながら後ろで悶えている中、神威は操縦室にてモニターを見上げながら、隣に立つ皐月の腰を抱いていた。
「阿伏兎が可哀想だ。」
「そんなこと言うけど、皐月さんのアレもさっきから凄い殺気出してくるんだけど。」
口には出していないが、大人しく後ろに控えているハルの背景には離れろ離れろ離れろという文字が神威には見えた。その従者にニコっと返せば、血走った目で睨まれた。
「晋助も来るのか?」
「うん。地球で待ち合わせしてるよ。皐月さん、会うの久々だよね。」
高杉が来るのか、と聞いたがそんな事は予め知っていた。
これが、ただのデートではない、ということも。
「神威、暑苦しいからそろそろ離してくれ。」
「ムードないなぁ。皐月さんモテないでしょ。」
「余計なお世話だ。」
そうして着いた地球には、既に鬼兵隊の船が到着していた。
高杉はいつもと同じように甲板に立っていて、そこへ神威に連れられていく。
「今日は俺とデートのはずなんだがな。」
煙管片手に振り返れば、もうどうでも良い、という顔で神威と相合い傘をしている皐月。高杉はそんな二人の方へ歩み寄った。
「そんな食い意地張ったガキとより、俺との方が楽しいだろうよ。」
「えー、皐月さんお酒苦手だもんね?飲み放題より食べ放題派だよね??」
「うるさい。僕は家でブルーレイ鑑賞会派だ。」
おー、インドア派か!なんて言う神威の胸を押し退け、彼女が沈み始めた夕陽の下に少しだけ出る。そこへすかさず控えていたハルが、傘を開いて影をつくる。
「随分、躾が行き届いた烏だな。」
高杉が、皐月の番傘に負けない黒い髪をもつハルを見て言った。