第6章 男のタマは時に刀でも切れない
「…晋助と小太郎とは仲良くしているか?」
「おう、だーい親友だぜ?特に高杉とは遊女取り合うくらい仲良しだ。」
全く男の人はそればかりだな、と微笑む皐月を見て、銀時は涼しい顔を装いながら、複雑な思いだった。
そりゃそうだ。
世間一般から見て幼馴染みだよ?銀さんのどー○い切った相手よ?しかもなんか磨きかけて美人になっちゃってんのよ?昔はちょっと良い感じの関係だったからね?
こんな場所でなければあわよくば、なんて良からぬ事を考えていた銀時の隣。
皐月が、ぽつりと呟いた。
「……あの人の事は、もう諦めろ。」
その言葉に銀時は思わず起き上がった。
「おい。今なんつった。」
「だがら、諦めろと言ったんだ。」
皐月はさしていた傘を閉じて、その場に立ち上がる。
「君達の先生の事は、もう諦めろ。死にたくないだろ?君も、彼らも。」
銀時を見下ろしていた彼女は、背後の屋敷に休んでいる彼の仲間たちへ振り返った。
「銀時。君も気付いているだろう。このままでは、本当に何もかも失う事になるぞ。…どのみち吉田松陽は、助からない。」
だから、諦めろと続くはずの言葉は、他でもない銀時によって物理的に止められた。
「なんつった、って聞いてんだよ。」
「女の胸ぐら掴むなんて、男の風上にも置けないな。」
先ほどまでの雰囲気は一転。
昔は体格こそ差があれど、背はあまり変わらなかった様に思う。
言うて五年、十年も前という訳でないのに、会わない間に随分色々と離れてしまったものだ。
皐月は銀時の手を上から掴んだ。
「君達の力では、吉田松陽は守れない。君達の元へ、吉田松陽は戻らない。」
「てめぇ、一体何しにきやがった。」
「……僕は、暗殺部隊天照院奈落の烏。ここで君が引かないなら、僕は君をここで、」
(手足を折ってでも、止めなきゃならない。)
銀時は夜兎の力を知らなかった。
女とは思えないほどの強力で、掴んでいた手は容易く離された。