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夕顔

第4章 恋にマニュアル本は必要ない




春雨本拠地の端に、その温室はある。
無骨な自動ドアの先は別世界。

半ドーム状のその部屋は壁、天井が特殊ガラスで、まるで宇宙にそのまま浮いている様に見えた。何処の星の植物なのか、背の高い緑の葉をつけた木々が道を作った部屋の奥に、ホワイトウッドのテーブルとガーデンチェア。

中にいるの者の確認もとらず、高杉はドアをくぐり真っ直ぐ進む。
彼はここの主に用があった。

「………招いたつもりは無いのだがな。」

「ああ。俺が勝手に来た。」

何かの書類を見ている皐月の向かいに断りもなく腰掛ける。そんな高杉に彼女はため息をついた。

「はやく春雨と手を切れと言っているだろう。星へ戻って大人しくしていろ。」

手元から顔を上げてみれば、行儀悪く片膝を立てて座っている高杉の右目と目が合う。煙管をふかす彼の表情を見て、やはり銀時は僕の話をしていないのだな、と思った。

「皐月、今回どこまで噛んでやがる。」

口角を上げてニヤついた顔をしていたが、その表情を潜めて問いかける。何の話か、なんて聞くだけ無駄だろう。神威の話で間違いない。彼女は静かに目を逸らした。

「おい。」

「それを知った所でどうする。」

吉原の一見から、提督は第七師団を更に警戒し始めた。
査定した上での判断として鳳仙を殺した、と報告した神威。皐月もそれに口を合わせていた。銀時の存在を隠すには、それが一番だったからだ。そのあたりからだと思うが、神威を推す者が目に見えて増え、さすがのアホもこの事態には焦っている様だった。

「いいから答えろ。死にてぇのか。」

僕からしてみれば君の方が危ないがな、と皐月は思う。元第四師団団長捕縛の件といい、江戸から真選組を引き剥がす作戦の件といい、春雨にプラスな動きをし続けてきた鬼兵隊。だが、鬼兵隊は春雨を利用していると、提督に口を出す輩が出てきてもおかしくない。

同盟船とはいえ高杉は仲間無しで一人。
話を聞けば、第七師団を亡きものにする今回の件も、高杉ら鬼兵隊が囮役をしたにも関わらず、その恩賞を何も受け取らなかったという。
第七師団として春雨に加入することも断ったとか。
その行動に、提督側の鬼兵隊への警戒も強まっている。

まぁもし加入する事になった暁には、今度こそ暴れなければならないと考えていた為、皐月には好都合だったが。
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