第3章 春休み明けの女子と夏休み前の男子はセットで気をつけろ
それは新緑の色増す季節のこと。
ある学舎では剣の稽古が行われていた。
ひたすらに素振りをする者。師に型を教わる者。竹刀を交えて高め合う者。
そして、
「最近、ヅラの様子がおかしいと思わねぇか。」
手合わせをした後であろう跡の残る少年たちは、目の前で新たに始められたそれを眺めながら壁に寄りかかっていた。
「そうかぁ?いつも通りクソ真面目野郎じゃねぇか。稽古終わるといの一番に帰るしな。」
「それだよ、それ。そわそわ気持ち悪ぃ様子で出ていくだろ。」
遅くまで残っていれば師である松陽に家まで送ってもらえるが、それよりも早く帰っていく桂。少し前からその様子が、高杉は気にかかっていた。
「おまっ、空気読めよ。思春期男子が一人でする事なんざ決まってんだろ。これだから坊々のお子ちゃまは。」
「坊々でもお子ちゃまでもねぇよ。あのお堅いヅラに限ってそりゃねぇだろ。」
「しらねぇのか?お前。あいつ、あぁ見えて人妻好きなんだぜ?」
「まじか……」
目の前で竹刀を振るう桂の横顔からは、遊びのあの字も見えない。
座学をサボりがちな銀時とは違い、最前列で師の教えを受けている様な奴だ。そんな桂に先を越されようものなら、高杉のプライドが許さなかった。
「………つけてみよう。」
「俺は興味ねぇ。パス。」
顎に手を当て何かを企み始めた高杉の隣、顎が外れそうな勢いで銀時は大きな欠伸を一つかました。