第11章 夜と罪
支え合えう?
何だそれは。
それが正直な皐月の感想だった。
彼女は、寄り添い合うという事をしらない。
それ故に、昔はその意味を知らなかった銀時と一緒にいる事は叶わなかった。だが、もう銀時は分かる。彼女が望んだ、"一緒にいたい"という願いの本当の意味を。だから、もう二人は離れる必要は無いのだ。
「…僕には、分からない。分からない、ぎんとき。」
未だ涙を落としながら、子供の様にわからないと繰り返しいう皐月。そんな姿に、銀時は胸を八裂きにされるような思いだった。
もっと早くに、なんて意味の無いことまで考えてしまう。いや、だからこそ。二人のこれからを、今の二人のこれからを大事にしていかなければならない。
銀時は彼女の身体を持ち上げて、自身の方に向かせた。
最後に顔を見たのは、二年前の烙陽。また彼女は綺麗になったな、と泣き顔に思う。いつも乾ききっていた瞳が、洪水しきっている。
着物の裾で頬を拭ってやると、彼女はすっと目線を銀時に向けた。
そこには、真っ直ぐ自分を映す彼の目。
昔と同じ、優しい目。
変わってしまったものばかりだと思っていたが、大事なものはすぐ近くにあった。
涙を拭く手に自分の手をそっと合わせると、銀時がすっと目を伏せる。少し滲んでみえるのは、自身の涙のせいだろう。ゆっくりと久々に合わせる唇は湿っぽいものだった。それでも、皐月の心はふるえた。
あったかい。
銀時の隣は、やっぱりあったかいなぁ。
口に出ていたのかは分からない。
銀時には正面から思い切り抱きしめられた。
あの日まわせなかった腕は自然と上がった。肩の怪我が治ったのは、戦うためではなく、この時のための事だったらいいなと皐月は思う。
ーー銀時の肩越し。
まわした自分の片手が握る煙管に光った白菫に、彼女はまた一つ涙をこぼした。