第30章 日常15:こんなの初めて♡
「ご、ご、ごめん…」
まだ身体はビクビク震えていたけど、身体を起こしてティッシュの箱に手を伸ばした。
「出して?」
抜き取ったティッシュを翔くんの口元に押し付ける。
けど翔くんは首をプルプルと横に振って、それから目を白黒させながら、ゴクン…て…
ねぇ、もしかして…だけど、
「飲んじゃった…の?」
僕が聞くと、翔くんはちょっぴり青いお顔をしてコクリと頷いた。
「大…丈夫…、じゃないよね…」
「い、嫌、大丈夫…だよ? 美味しかった…し…」
嘘ばっか…
だって僕知ってるもん、美味しくなんかないって、よーっく知ってるもん。
しかも、喉に貼り着くってゆーか、凄く違和感しか感じないから、僕も慣れるまではけっこう大変だったし…
「お水…飲む?」
こんなこともあるかと、ティッシュと一緒に用意しておいて良かった。
僕はペットボトルボトルを手に取ると、キャップを開けてから翔くんに手渡した。
すると、ペットボトルを受け取った翔くんは、まるで浴びるような勢いで水を飲み、最後に腕で口元を拭った。
「ふぅ〜、生き返った…」
「え、そんなに…?(笑)」
分かるけどね?
僕も初めて飲んだ時はそうだったから。
「もぉ…、無理しなくて良かったのに…」
僕が言うと、翔くんは少し照れたようなお顔をして、頭をポリッと掻いた。
「無理はしてないよ? ただ、想像してたのとは…ちょっと違ったけど…」
そ、想像…って…、一体どんな味のモノを想像してたんだろ?(笑)
「でもさ、智くんの身体から出るモノだから、一滴も無駄にしたくなかった…っつーかさ…、だから無理はしてないけど、正直美味くはなかった…かな」
「ぷっ、ぷぷぷ、もぉ…、翔くん面白過ぎ(笑)」
「わ、笑うなよな…、これでも一応“初めて”なんだし…」
うん、そうだよね。
翔くんにとっては、息子くんをお口にするのも、吐き出したモノを飲むのも、全部初めてのことなんだもんね?
「ふふ、ありがと」
僕を翔くんの“初めて”の相手に選んでくれて…、ありがと♡