第23章 scene5:“初”エステ♡
あ、そうだ…
「ねぇ、HIMEお写真撮って欲しいの。ダメ?」
「良いけど…、今日は試着だけだから、ヘアメイクだって簡単だし…、当日の方が…」
「ううん、今が良いの」
だって、こんな新鮮な気持ちって、今だけじゃん?
そりゃさ、メイクもヘアも完璧な方が良いに決まってるけどさ、当日は当日できっとお顔だって強ばってるだろうから…
「ね、お願い?」
「分かったわ、撮ってあげる」
やったぁ♪
僕は長瀬さんに預けていたHIME専用スマホを受け取ると、今度はそれを斗子さんに手渡し…たんだけど、すぐに取り上げ、
「撮って?」
長瀬さんの手に戻した。
「俺が…か?」
「他に誰がいるの? ほら、早くぅ」
僕は斗子さんの腕に自分の腕を絡めると、僕よりも少し高い位置にある肩に、コツンと頭を預けた。
斗子さんは驚いてたけど、仕方ないじゃない?
僕、斗子さんと一緒に撮りたかったんだもん♪
「ったく…、ほら、撮るぞ」
「はぁい」
僕は長瀬さんが構えたスマホに向かって、とびっきりの笑顔を向けた。
そして斗子さんも…
「ふふ、ありがと♡」
スマホの写真を確認して、斗子さんにお礼を言うと、斗子さんはちょっぴりはにかんだような顔をしていて…
そのお顔がとっても綺麗で、そんな斗子さんを見ていると、やっぱり僕は姉ちゃんを思い出してしまう。
ま、姉ちゃんは斗子さんみたく優しくないんだけどね?(笑)
「じゃあ、当日また会いましょうね?」
「はい、お願いします」
玄関先まで見送りに出てくれた斗子さんにお礼を言って、僕は長瀬さんの運転する車に乗り込んだ。
すると、
「ねぇ、HIMEちゃん?」
斗子さんが助手席まで駆け寄って来て、窓を叩いた。
「いつか見せて上げられると良いわね、HIMEちゃんの好きな人に、HIMEちゃんのとびっきり綺麗ウエディングドレス姿」
「え…? あ、はい!」
いつか…
翔くんと一緒にバージンロードを歩けたら、どんなに幸せなんだろう…
そんな夢…もしかしてら叶わないかもしれないけど、今だけ夢見ても良いよね?
『“初”エステ♡』ー完ー