第11章 scene3:病院
あれから何度か櫻井くんとはバイト先で顔を合わせているけど、櫻井くんから“いつ”撮影現場の見学に行くのかは、教えて貰えなくて…
僕が悪いんだけどね?
一緒に…って誘ってくれたのに、興味ないからって断っちゃったから。
でもさ、そもそも僕が行けるわけないじゃん?
僕の素顔を知ってるのは、長瀬さんを始めごく限られた人だけだけど、“もしも”ってことがないわけじゃないからさ…
だって僕が“HIME”だと櫻井くんに知れたら…って考えるとさ、やっぱり尻込みしちゃうし、怖いもん。
だから櫻井くんに誘われても、僕は首を縦に振ることはしなかった。
櫻井くんの理想を壊したくないし、僕自身が櫻井くんに嫌われたくなくて…
でもやっぱ気になっちゃうんだよな…
だからかな…
「おい、ちゃんと聞いてんのか?」
いつもは割と穏やかに接してくれる長瀬さんに、若干キツい口調で言われるまでボーッとしちゃって…
「あ、ご、ごめん…、衣装の話…だったよね?」
僕は慌てて資材置き場と化しているトランクを振り返った。
「えっと…、今回の撮影場所って、病院だったっけ?」
「ああ、そうだ」
僕が聞くと、長瀬さんが憮然とした顔で僕を振り返った。
「僕…ナースになるんだよ…ね?」
確か…、ちょっと前にHIMEのファンの人に向けたアンケートで、“HIMEのナースを見たい!”って意見が多かったんだよね…
で、そのアンケートの結果が反映されての今回の撮影なんだけど…
僕、ナースの服って、白いのしか無いと思ってたんだけど…
こうやって見てると色んな色があるのね?
ふふ、どれも可愛くて迷っちゃうよ♪
とは言え“ナース”って言ったら…
やっぱり…