第9章 日常3:彼の部屋
櫻井くん、怒ってるかな…
変に誤解してなきゃ良いけど…
そんなことを考えながら業務をこなし、いよいよ待ちに待った休憩時間。
僕は、長針と短針が重なるのを待って、スタッフルームに駆け込んだ。
エプロンを外す間も惜しんで、ロッカーに仕舞い込んだリュックからスマホを取り出す。
もし返信がなかったら…
いや、それどころか“既読”すらついてなかったらどうしよう…
僕は心臓がバクバクするのを感じながら、メッセージアプリを立ち上げた。
お願い、何事もなかったようにスルーして!
と、心の中で祈りながら…
でも現実はそんな甘いモンじゃないよね?
一応“既読”はついてたし、返信のスタンプだって送られて来てたけど、そのスタンプってのがさ…
HIMEに良く似たキャラクターが、眉間に皺寄せて“チッ!”って舌打ちしてるスタンブで…
その瞬間、僕の頭も肩も、見事なくらいにガクーンと落とした。
そりゃそうだよね…
あんなスタンプ送られたら、そうなるよね…
僕は溜息を一つ落とすと、スマホの画面にメッセージを入力した。
『ごめん、さっきのスタンプは間違い』
『今日バイト休みみたいだけど、どうした?』と…
すると今度は数秒も待つことなく“既読”がつき…
それから更に遅れること数秒…
『風邪引いた』と、短いメッセージが返って来た。
え、櫻井くんが風邪…?
『熱は?』
『39度ちょいある… 』
マジか…
『家に誰もいないの?』
確か実家暮らしだって言ってたけど…
『親、旅行行った。俺一人』
嘘でしょ…
『一人で大丈夫?』
『大丈夫じゃない。死にそう』
だよね…、そんだけ熱あったら辛いよね…
きっと病院にも行ってないだろうし…
どうしよう…