第14章 Tears!〈遠坂 雪音〉
『あ、つ…るぎ、君…』
「どうかしたのか?」
『い、いえ…何も…』
元の時空に戻ってきた筈なのに、まともに顔を見れなかった。
「でも…」
『すみません…少し、一人にして下さい…』
「悪いが」
その言葉と共に腕を掴まれた。
「その要望は聞けない」
そのまま何処かに向かって走り出す。夕日がいきなり目に飛び込んできて、繋がれていない方の手で視界を遮った。
『あ、あの!剣城君⁉︎』
「良いから」
何処へ向かっているのだろう。気が付くと校門を抜けて、河川敷に来ていた。
『剣城君…』
「話は全部天馬から聞いた」
『…』
「兄さんと、瑪瑙さんが…」
『優一さんと瑪瑙さんから、此れを貰ったんです』
二つのタイムブレスレットを差し出した。
「一つ、貰って良いか」
『はい。そうしようと思っていたので…』
「そうか」
『…』
隣に居るのは間違いなく本当の剣城君だ。なのに…なのに。怖いんだ。また、拒絶されるんじゃないかって。
「辛かった…よな」
『…少し』
また会うって約束したのに、あんな形で再会してしまうなんて…そんなの嫌だった。
『また、出会うって約束しましたよね』
「ああ」
『だから、私を庇って、自ら飛び込んだんですよね。あの青い光に』
「ああ」
『あんな事になるなら…私も一緒に…飛び込めば良かった…!』
「それは駄目だ」
『どうして!』
「そうしたら、誰が兄さんや瑪瑙さんを理解出来た?」
確かに…そうかもしれない、けど…。でも…。
『でも、剣城君を犠牲にする必要はなかった筈です…!』
「お前なら、好きな奴を犠牲にするか?」
確かに、菖蒲ちゃんや瑠璃さん達と同じ様な状況になったら、私は間違いなく剣城君と同じ様な行動を取っていた。
「驚かないんだな」
『だって、私だって同じ行動を…』
「そうじゃない」
『え…?』
「好きな奴って言われて、驚かないんだな」
『え、え⁉︎』
「遠坂、好きだ」
こ、これはどういう意味の…?家族とか、友達とかの様な…?
『あ、ありがとうございます…?』
「意味分かってるか?」
『わ、分かってません…』
「こういう意味だ」
その瞬間に唇に柔らかい感触がした。何が起こったのか分からなくて、そのままフリーズしてしまう。
『あ、あの…?』
「返事を聞かせてくれ」
剣城君の事が…好き?私は…剣城君の事が、好き…なの?