第12章 Unknown!〈栗花落 菖蒲〉
『もう、姉さん!心配したんだから!』
「ごめんごめーん!油断してた〜」
姉さんが事故にあったと病院から連絡があって、急いで駆けつけてみれば…。足を骨折したらしいが、車を避ける時にやってしまっただけで、事故というより完全なる不注意だった。
『本当にお騒がせなんだから…』
「えへへ…」
『はぁ…心配して損した』
「えぇ…ちょっとは心配してよ…」
『はいはい。無事なようなら何より。今日はこれで帰るね』
「え〜!もう少し話そうよ〜菖蒲〜」
面倒臭そうだから帰ろうと思っていたその時、母さんからメールが来ている事に気が付いた。
〈蓮華もきっと退屈して寂しいだろうから、菖蒲がお話してあげてね〜!〉
母さんがナイスタイミングで送って来るものだからしょうがない。もう少しいる事にしよう。
「あ、そうだ。一応ちゃんと菖蒲に頼まれた材料は買っておいたんだよ!」
『え、姉さん買ってきてくれたの?』
「だって菖蒲が言ったんだよ?買ってきてーって」
『いや、絶対忘れてると思ってたから』
「え、ひっどーい!」
こんな調子で姉さんと話し込んだ。そろそろ面会時間も終わるとの事だったのでそろそろ帰る事に。そしてある病室の前を通った時、露骨な違和感を感じた。
『え…?』
頭が…痛い。私、此処で何が…?此処で、知らない人に…。
『気のせい…気のせいだよきっと』
そう、デジャブというものだ。もしくはこんな状況を夢で見たか。絶対に違う。
ーー数ヶ月後
友達から誘われて、私はダンス部に入る事になった。今年の課題曲の完成度も良く、久しぶりに休暇を貰えた。
「ねぇ菖蒲知ってる?」
『何?姉さん』
「サッカー禁止令が出たんだって!」
『へぇ…まぁあんな事があったらね』
アメリカ対日本の親善試合。日本はアメリカ代表への暴力行為諸々で試合が中止になった。それからあの日本代表は日本の恥晒しとしてバッシングを受けていたが、今はどうなっているのだろうか。
「酷いよねぇ」
『よくもあんなこと出来るよね。神経が分からない』
「絶対そのせいだよ。ってあれ、雪音ちゃんってサッカー得意じゃなかったっけ」
『あ〜うん。まぁ確かに』
「絶対がっかりしてるよねぇ。励ましてあげなよ」
『分かってる』
ただ、私の中で何かが引っ掛かっていた。何かが違うと思ってしまう。ここ最近ずっと違和感しか感じていない。