第2章 Darkness!〈遠坂 雪音〉
春休みに入ってすぐの事だった。幼馴染の菖蒲ちゃんと公園で遊んでいた日。いつも通り、なんて事無い日だった。いつもの所で菖蒲ちゃんと別れて、お日さま園に向かっていたその時だった。後ろから催眠訳を嗅がされて、気を失った。目を開けるとそこは…。
『ん…』
「目覚めたか」
『こ、こは…』
「ここはフィフスセクター。これから、貴方が生活する場所です」
『え…あの…私は…』
「貴方をグランドシードとして迎えましょう」
フィフスセクター…?グランドシード…?何を言ってるの…?
「早速始めなさい」
「はい」
その瞬間に、何かを注射器で注入される。何なの…何を…するつもりで…。
『や、やめて下さい…!』
「何も怖くない。さぁ、彼女をゴッドエデンへ」
「仰せのままに、千宮路様」
千宮路…?聞き覚えの無い人の名前だ。一体何が起きているの…?分からない…どうして此処に…?
「貴方は、シードを強化するシードだ」
『シードを強化するシード…?』
「トレーニングを」
「はい」
頭に?マークが沢山付いている中、連れて来られたのは荒れた所だった。そして奥に連れて行かれると、いきなり走れと命令される。
『え、あの…』
「良いから、走れ!」
『は、はい…』
言われるがままに、グラウンドの周りを走る。本当はあんまり激しい運動をしてはいけない。どうして、助けて…ヒロトさん、瑠璃さん…。
「あと10周だ」
『え、でも…』
「早く!」
『…!』
強く言われて、逆らう事も出来ず、そのまま走り続ける事になった。でも、いつもならこの位でもう辛いはずなのに、全然辛く無い。さっきの薬が原因だろうけど…。
「次は化身を出させなさい」
「はい。付いて来い」
『は、はい』
訳が分からないまま、男の人の後ろに付いて行って「化身」という物を出させる訓練を受けた。すると、案外あっさり出てしまって、私を攫ったピンクの髪の人も、指導役も口をあんぐりと開けている。
『あ、あの…』
「素晴らしい!私の見込んだ通りだ」
「しかし、千宮路さま…。この化身は何か今迄と違う様ですが…」
「聞いた事がある。自らの手足となって主の助けとなる化身があるという話を」
『こ、これは一体何でしょうか…?』
「それは「化身」だ。君にしか出せない唯一のタイプのね」
『化身…』
「そうだな、名前は…エールだ」
確かフランス語で翼…。