第8章 Departure!〈栗花落 菖蒲〉
『サッカー教育プログラム?』
「うん。僕も行くことになったんだ。ここ暫く、脱走しないで療養してたから、もう存分に体動かして良いんだって」
『そっか。良かったね』
「それでさ…菖蒲にも、ついてきて欲しいんだけど…」
『…え?』
「豪炎寺さんに話してはあるんだけど…」
『う〜ん、どうだろう…。行けない事はないだろうけど、家事もあるし…』
「そっか…」
『何とか掛け合ってみるから、そんなあからさまにしょぼくれないでよ』
今日も今日とてお見舞いに来てる訳だけど、このサッカー教育プログラムがあるって事はもうじき退院するなという事なのだろう。
『でも、そのプログラムに参加するって事は、太陽ももうそろそろ退院でしょ?』
「うん!」
『良かったね』
「でも、これで毎日は会えないのか…」
『別に、ラインでも何でもあるでしょ』
ぶっきらぼうにそう伝えるとちょっと嬉しそうに笑った。ああ、調子が狂う…。
『それじゃあ、今日は帰るね』
「うん。またね」
『脱走しちゃダメだよ』
「しないよ!」
釘を刺しつつ、家に戻った。家に帰ると、真っ白の封筒が私宛てに届いている。これがサッカー教育プログラムとかいう物の詳細なのだろうか。資料を見てみると、主にマネージャーの仕事として福島に派遣らしい。承諾書も一緒に入っている。
「どうしたの?菖蒲」
『姉さん。これに行きたくて…』
「ふ〜ん、もしかして…太陽君?」
『サポートに来て欲しいんだって。私も出来れば行きたいんだけど…』
「菖蒲が行きたいなら、お父さんもお母さんもきっと否定しないよ」
『うん』
その夜、両親が帰ってきた後に、プログラムの事について話した。両親も反対はしなかったし、むしろやりたい事を見つけてくれて嬉しいといった感じだった。
「いつなの?」
『1ヶ月半位後。1週間福島に行ってくる』
「そっか〜!菖蒲からこんな事言ってくれるなんてね〜!」
「福島はいい所だぞ〜!大内塾も外せないな」
『別に観光に行く訳じゃないんだから…』
「でも最終日は観光もあるみたいだよ〜?」
『へぇ…』
まぁ確かに、折角行くなら、あっても悪くは無いと思う。
「1週間分、洋服とかある?」
『どうだろう…。小さくなってるから、何着か買った方がいいかもしれない』
「そっか。それじゃあ週末に蓮華と買い物行ってきたら?」
『うん、そうするよ』