第42章 HLHI Ⅷ〈栗花落 菖蒲〉
「これ以上知ってどうするつもりだ」
『仮説だけど…この髪は元々願いを叶えるものではなかった』
「というと?」
『髪を切った事で、目に見えて不幸な事が連続して起こった。多分これは偶然じゃない。お父さんも分かるでしょう』
「そうだな」
『もしこの髪が他の人に影響を及ぼしてしまう様なら、その原因を突き止めて対処しなければならない。私は歩く厄災にはなりたくない』
恐らくだけど、この髪が他の人に影響を及ぼしている可能性はかなり高い。既に片鱗が見えている。
「それはお前だけで対処できるのか」
『むしろ私にしかできない。この世で翡翠の髪を持っているのはもう私だけだから』
「…はぁ、分かったよ。やっぱり娘ってこうと決めたら強いなあ…」
『でも今のやり取り凄いお父さんぽかったよ』
「えっほんとに⁉︎威厳あった?」
『今の答え方で台無しだけどね』
「コホン。まぁ話は分かったよ。明日は丁度休日だし栗花落家まで送っていこう」
『多分、1日2日で終わるような事でも無いから、暫くは栗花落家に居なくちゃいけなくなると思うの』
結構な時間がかかるだろう。資料を探したりするだけでも苦労しそうだ。
「なら、お母さんが一緒に着いて行くわ」
『でも仕事が…』
「子供のためだもの。まだ高校生だし1人にはさせられないわ」
『ううん。やっぱり私1人で行く。お母さんを巻き込むわけにはいかない』
「そんなのダメよ。菖蒲に何かあったら…」
『大丈夫。私に何かあったら、蓮華をなんとかできるのはお母さんとお父さんでしょう。お願い。1人でやらせてほしいの』
「仕方ない…分かった。ただしこまめに連絡は寄越すようにね」
『ありがとう』
栗花落家で何か分かれば良いんだけど…。始まる前から弱気になるのは良くないし、兎に角やるしかない。
「何かあったら、遠慮なく父さんや母さんを頼って良いからな」
『うん』
「そういえば、あっちに行ったら食料とかお布団とかどうするの?」
『村の中にお店があったのは覚えてるし、布団は…こっちのを持っていこう』
「お店があるなら安心ね」
『それじゃあ準備して私はもう寝るね。明日、運転よろしくねお父さん』
「任せろ!」
「全くお父さんったら…おやすみ、菖蒲」
『おやすみ』
なんとか両親を説得する事ができた。これからは長丁場になる事だろう。しっかりしなくては。