第40章 HLHI Ⅵ〈栗花落 菖蒲〉
遂にイギリス戦の朝。私としては複雑だったけど、兎に角全力でイナズマジャパンを応援するしかない。
『き、緊張してきた…』
「本当なら茶化すとこなんだけど、渦中にいる本人だから言いづらい…」
『雪音…』
「私がいない間になんだか厄介な事になっちゃってまぁ」
『もう良い加減にしてって言いたいところだけど…』
「不幸体質というか、変な人に好かれる、ってやつ?」
『やめてよ、自覚はしてるし』
栗花落家と関わるようになってからこういうのが結構増えた。もう引き篭もろうか悩むほどには多くなった。
『皆に任せちゃうのが本当に申し訳ない…はぁ』
「まぁ、信じようよ。私達には見守ることしかできないから」
朝ご飯を作りながら雪音と会話するが気持ちは晴れない。強いて言うなら晴れる晴れないとかいう次元じゃない。
『こんな所かな…皆起こしてくる。これ分けといてくれない?』
「任せて。行ってらっしゃい」
エプロンを取ってテーブルに置いた。一部屋ずつ回って皆を起こすが、大会の日の朝は大体皆早起きしてるので、手間が省ける事が多い。
『おはよう、狩屋君』
「う…」
『そんな露骨に嫌そうな顔しなくても』
「…ごめん」
『もう気にしてないよ』
「栗花落さんのせいにするのは違かった」
『雪音にこってり絞られたんだね。でも本当にもう大丈夫だから。それに私も謝らなきゃいけないと思ってて』
「え」
あの時、冷たい態度を取ってしまったこと、悲しい気持ちにさせた事は謝らなくちゃいけない。
『狩屋君と最初に話した時、冷たい態度取っちゃってごめんね』
「べ、別にあれは普通の対応でしょ」
『悲しい気持ちにさせたのは事実だから。だから謝るの』
「…本当、お人好し」
『なんか言った?』
「なんにも!」
狩屋君も、あの時の事を考えてたんだな。本当はずっと罪悪感があったのかもしれない。
『これでおあいこだね。さ、行こう。朝食の時間だから。私は一応まだ寝てる人いないか見てくるから先に行ってて』
狩屋君と仲直りもしたし、今日は良い一日になりそうだ。取り敢えずウキウキな気持ちで部屋を見回ったけど、皆起きてるみたいで安心。そのまま食堂へ向かうと先程とは打って変わってのお葬式ムードだった。
『えっ、暗…電気ついて…るか』
「呑気ですね」
『真名部君』
「貴方の異動が関わっているというのに」
『そういえばそうだった…』