第5章 Startle!〈栗花落 菖蒲〉
太陽の病室に毎日来るようになってから大分時間が経っていた。でも、それと同時に雪音の捜査が難航しているのも事実で。
「菖蒲、明後日此処に来て欲しいんだ」
『え?』
「どうしても外せない予定があるなら良いけど…」
渡されたチケットを見ると、そこにはデザートスタジアム開催とあった。それに、対戦校は新雲と雷門だった。
「一緒に、見に行こうよ」
『え…許可は…?』
「勿論、貰ってあるよ。だから、一緒に来て欲しいんだ」
『わ、分かった…』
チケットもちゃんと二枚ある。やっぱり、自分の学校の応援は行きたいんだと思うし、太陽は何より雷門の事を気にしていた。
『でも、無理はしちゃ駄目だよ』
「うん、約束するよ」
この日は学校も休みだ。偶には私服でも良いのかもしれない。それに…もしかしたら雪音も…。
『そしたら病院に迎えに来た方が良いのかな』
「ううん。ホーリーライナーって言うのに乗らなきゃいけないんだ。そこの前で待ってるよ」
『う、うん…?』
なんか…面倒臭いんだな…。スタジアムに行くのにも一苦労って訳か。
「そっか〜!初めて菖蒲とデートか〜!」
『は⁉︎』
「冗談冗談!でも、菖蒲はロシアンルーレットスタジアムに来た事無いでしょ?」
『うん。帝国は地区予選で敗れちゃったから…』
「だから、どうせなら一緒に行こうよ」
『うん』
少し…嬉しいと思ってしまう。太陽と一緒に居られるのが、ここ最近の楽しみでもあったし。
「楽しみにしてる。菖蒲」
『…』
「あ、顔真っ赤〜!」
『うるさい!』
ーー明後日
『お、おはよう…』
「おはよう、菖蒲」
『ロシアンルーレットスタジアムって…こうなってるんだね』
「うん。このホーリーライナーでデザートスタジアムに行くんだよ」
流石…現代の技術を惜しみなく使っている。凄いな…なんだか見てるだけでも圧倒される…。
「行くよ、菖蒲」
『え、あ…うん!』
太陽に手を引かれるままにホーリーライナーに飛び乗った。選手用とは別に観客用の座席に乗った。選手用はガラス窓があるが、観客用は普通の電車と同様になっている。
「菖蒲、今日の服、可愛いね」
『お、お世辞は良いから…!』
「お世辞じゃないよ」
太陽は本当に天然タラシだと思う。こんな事言われたら勘違いする女子も多そう。
『あ、辛くなったらいつでも言って。ちゃんとスマホ持ってきてるから』