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Diva!【イナズマイレブンGO】

第35章 HLHI I〈栗花落 菖蒲〉


本当に良いのだろうか。全部、自分でやらなくちゃいけないと思っていた。他の人の手を煩わせるのはどうしても忍びない気持ちがあったから。

「菖蒲、昔何かあった?」
『昔…?』

私が全部自分でやろうと思った原因…。

『…私がやると、皆褒めてくれたから』
「そっか」

私がやったら皆凄いと褒めてくれる。両親も、姉も、凄い凄いと言って頭を撫でてくれる。それが嬉しい。できる子だと自分で再認識できる様な気がして。

「確かに、菖蒲が頑張ってたら頭を撫でて褒めたい気持ち、凄く良く分かるなあ」
『えっ…』
「でも、それは全部の事を菖蒲がやったから褒めた訳じゃないよ。菖蒲が頑張った事を褒めてるんだ」
『頑張った…か』
「そう。菖蒲は毎日コツコツ頑張ってて真面目な性格でしょ?そのコツコツ真面目に頑張った事に対して皆評価しているんだよ」

頑張り、か。頑張っている自覚もないのがそもそも感覚麻痺なのだろうか。

「菖蒲は毎日頑張ってて偉い。いつもありがとう。支えてくれて」

ぎゅっと太陽が抱きしめてくれる。汗の匂いが少しだけ安心させてくれた。

『た、太陽…!』
「よしよし。毎日頑張ってて偉いよ、菖蒲」
『なんか…子供扱いされてる気分…おんなじ事言われてるし…』
「何回だって言うよ。大事な事だから」
『そ、そっか…』

大事な事なんだ。私が頑張ってる自覚はないけれど、頑張っている事が。

「そう。ね、久し振りにお泊まりしない?」
『えぇっ⁉︎』

確かに最近あんまりお泊まり回開催してないし、いっか…。

『じゃあ、準備できたら連絡するから…迎えに、来て』

照れ隠しで太陽のジャージの裾を摘みながら顔を背けた。自分からお願いするというのは、とてつもなく恥ずかしい。

「勿論!じゃあまた後で!」
『うん』

手を振って曲がり角を曲がる。そして、目の前には大きな男がいた。

『うわっ…すみません…』
「栗花落 菖蒲だな」
『いえ…人違いですけど…』

嫌な予感がして、咄嗟に嘘を付いた。まるで太陽と別れる所を狙っていたみたいで気持ち悪い。

「翡翠の髪の持ち主、間違い無いな」
『なんですか、それは』

一歩ずつ後退った。少し先に太陽の家がある。そこまで行けば。まずは足で薙ぎ払って相手の体制を崩し、そのまま太陽の家まで。幸いまだ太陽の姿が見える。

『太陽!助けて!』

その瞬間、殺気が満ちた。
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