第35章 HLHI I〈栗花落 菖蒲〉
遂に今日、イナズマジャパンの選抜試合が行われる。私と雪音はイナズマジャパンのマネージャーとして色々働く事になる。
『おはよう、太陽』
「おはよ!菖蒲!いよいよ今日が選抜試合かぁ!」
『やっぱり緊張しないね。まぁ頑張れ。私には応援しかできないけど』
「ううん、応援が何よりの力になるから!絶対に選ばれてみせるよ!」
笑顔でそう言ってくれたら、私の方がかえって安心できた。太陽ならきっと大丈夫だと信じているけど、やはり発表までは誰が選ばれるか分からないから。
『信じてるよ。太陽なら大丈夫。という事で、はい』
「これって…」
『もっと前に渡そうと思ってたけど、思ったより時間かかっちゃって今になっちゃった』
太陽が燦々と降り注ぐように見える刺繍と、見えないようにお守りの内側には菖蒲の花の刺繍がされた布切れを入れておいた。どうせ開けないだろうという安易な考えだけれど。
「ありがとう…!これ菖蒲がやってくれたって事だよね…⁉︎」
『業者に頼んだら多分もっと綺麗だよ…。素人だからちょこちょこ変なとこあるかも』
「嬉しい!これずっと持ち歩く!」
『え、あ、うん』
まさかそんなに気に入ってくれるとか思ってなくて、吃った後にうんと答えるのに精一杯だ。太陽はいつも予想外で意表を突かれる。
『そういえば、昨日優一さんの所に泊まってたんだっけ。迷惑かけなかった?』
「菖蒲、もしかして僕のお母さん…?って別に迷惑かけてないよ!でもすっごく楽しかった!」
『じゃあ良かった。なんかあったらどうしようって思って』
「なんかって?」
『いや、実は寝坊しちゃってドタバタしたとか…』
ありそうな気はするけど、でもサッカーに関して彼は誠実だ。遅れる事は今まで無かったし実はそんなに心配してない。現に今日も待ち合わせ通りに来たし。
「してないよ!」
『知ってる。冗談だよ。早く行こ』
「も〜!」
『サッカーに関しての待ち合わせで遅れた事ないしね、太陽は』
「確かに…」
『それ以外は言わないでおくけど』
「うっ」
休日のデートとか前日の練習の疲れがあったのか遅れる時がある。それも加味して基本14時集合なのだが、それでも別に構わない。どうせ30分も待てば来るのは分かってるし。でも、そういう時に限って寝かせてあげれば良かったなって私が後悔してしまう時が多い。
『気にしてないよ。慣れてるから』