第34章 Boys!〈剣城 優一〉
「菖蒲可愛い〜!」
「あ、ありがと…」
照れたように菖蒲ちゃんが顔を背けた。普段の2人はこんな感じなんだろう。
「京介。どう?可愛くない?」
「ぐっ…かわ、いい…」
かなり照れている。顔を真っ赤にして口まで押さえちゃって。弟の照れ方ってこんな感じなんだと改めて見せつけられた感じだ。
「どこが変わったか分かる?」
「…」
じっと見つめて横から見たりして、本当に面白い弟だ。
「分からないのに、可愛い」
「あっはは!」
我慢できずに雪音ちゃんが吹き出して笑っていた。まぁそんな風に言われたら笑うしかないだろう。京介はこういう所があるから天然タラシなのだ。
「アイシャドウ変えたね?今日買いに行ったの?リップもいつもブラウン系だったけど今日はピンク系にしたんだね。似合ってるよ」
「え、えぇ?何で分かるの…?」
こっちはこっちで全部気付いてしまう。寧ろ本人よりメイクが詳しそうな印象を受けた。
「どう?皆可愛いでしょ?」
『瑪瑙もな』
「えっ」
『アイライン、今日は少しだけ長めに引いただろ?』
「わ、わかるんだ…」
『何年瑪瑙の顔見てると思ってるんだ』
笑いながらそう言えば、茹で蛸のように顔を真っ赤にさせて俯いている。
「あ〜!優一さんと瑪瑙さんがイチャついてる〜!」
「ちょっと太陽!」
「まぁまぁ、此処は瑪瑙さんと優一さんの家なんだから好きなだけイチャつかせてやりなよ。見てて楽しいし」
「お前な…」
『皆も大分仲良くしてたと思うけどな…』
さっきまでそれぞれに良い雰囲気だったのに急にアウェー感がやってきてしまった。
「あ、そうだ。私そろそろ帰って秋さんのお手伝いしなきゃ」
「私も、そろそろ帰って夕食作らないと」
「送る」
「僕も!菖蒲達送ったら合流しようよ剣城君!」
「分かった」
「じゃあ僕達行ってきます!」
と言って4人ともゾロゾロと出て行ってしまった。玄関で見送りはしたものの、何と無く気まずい。
「恥ずかしい所見られちゃった…」
『はは、そうだな』
「でも、メイク気付いてくれたの嬉しかったよ。ありがとう優一君」
『昔から、瑪瑙の些細な変化にもよく気付いてただろ?』
「そ、そうだね…確かに」
油断した唇にそっと口付けてしまえば、本物の茹蛸が完成してしまった。どことなく頭から煙も出てる気がする。
「もうっ!優一君の馬鹿!」