第34章 Boys!〈剣城 優一〉
「お久しぶりです!優一さん!」
『久し振り、太陽君。元気そうだね。どうぞ上がって』
普段は瑪瑙と一緒に暮らしている家に京介と太陽君を招いた。今日、瑪瑙は講義でいないことと、空ヶ咲高校が創立記念日で休みである事が重なって、今日3人で集まる事になった。本当は天馬君も呼ぼうかと思ったんだけど、彼は別の用事があって今日は来れなかった。
「凄い!綺麗なお家!」
「兄さんと瑪瑙さんの家が汚いはずがないだろ」
「そうだね!」
『そうか、太陽君は瑪瑙と知り合いだったね』
「優一さんの病室に遊びに行った時に会ったよ!」
『そうだったね』
ここに居る皆、稲妻総合病院での繋がりがある。俺と太陽君はどちらも入院していた。
「瑪瑙さんは?」
『今日は大学の講義があるからね。今の時間は家にいないよ』
「じゃあ今日は男同士の語り合いができるってわけだ!」
「気持ち悪い事言うな」
『面白そうだね!』
「に、兄さん⁉︎」
京介が驚いた様に顔を歪ませた。京介は案外、突飛な事に凄く驚くし言うほど感情表現が乏しいわけじゃない。
『女子だって女子会開くし、今日は男子会って事でいいんじゃないか?』
「そうそう!」
「はぁ…分かったよ…」
『そうだ、お茶を淹れるから待ってて。丁度お菓子も昨日買ってたんだ。2人が来るって聞いてね』
この前は実家に用事があったから偶々雪音ちゃんと鉢合わせたが、基本はずっとこの家にいる事が多い。お茶は瑪瑙の趣味でたくさんの種類の茶葉が置いてある。お菓子は基本瑪瑙の自作の事が多いが、それは自分が味わいたいから敢えて買った。
『太陽君は、彼女とはどうなんだ?』
「なんかそれ凄いパパみたい…」
「げほっ…!」
「あっ!剣城君が咽せてる!」
「…るせぇ」
『大丈夫か?京介』
何故か京介のツボに入ったみたいで暫くゲホゲホ言っていた。若干面白いと思い始めている自分がいる。
「でも、そうだな。一緒にいて居心地がいいから、毎日すごい楽しい!お互いダメな時はカバーし合うのを自然にできるんだ」
彼女の事を話す太陽君の顔はとても優しい顔で、いつもの無邪気な顔とは打って変わって大人びている。彼女の存在がそうさせているのだろう。
『太陽君がそう思える相手と出会えて、良かったね』
紅茶をティーカップに注ぎながら答えた。ベルガモットの香りが鼻をくすぐって通り抜けていく。