第32章 Iris!〈栗花落 菖蒲〉
文化祭のミスコンに勝手に応募されていた事が判明した。しかも太陽が勝手に。
『はぁ…どうするの?太陽』
「実はもう決めてあるんだ。これ」
仕事が早いと思って見てみれば、センスは悪くない。着物が緑で袴は紫。私の髪と目の色に合わせた色を選んでくれたんだろうな。袴の模様って大体花だから今回の模様も菊と藤でバッチリ合ってるし。
「どう?良いでしょ」
『まずは、私に何か言う事、あるよね?』
「ご、ごめん…」
『よろしい。まぁここまできたら後戻り出来ないし、やれるだけの事はやるから。ヘアアクセとかは決まってる?』
「うん。これでどう?」
私の髪が短くなった事もあって、髪飾りはシンプルにリボン。ボブはヘアアレンジが限られるけど、その辺は詳しい人に教えて貰えば良いし。
『これだと靴はブーツが良いかな。合うブーツは持ってるから安心して。取り敢えずこんな所かな』
「今からすごく楽しみだよ!」
『はぁ…。まぁ良いや』
お互い部活で疲れ果てた所で割と思考がポンコツになっている。
「そういえば大会あるんだよね。調子はどう?」
『今は大詰め状態かな。でも、ミスコンに出るにはダンスを別で覚えたいな…』
「でもそれだと負担が…」
『やるよ。今までなあなあで生きてきた分、此処が頑張る時なんだよ』
ダンスは楽しかった。毎日が充実していて、体力に自信のある私にはピッタリな部活だ。
『丁度自分で練習していた曲があったし、それをやってみようかなって思って。それを磨き上げれば負担は少ないしね。ぶっ倒れるまで無理するつもりはないよ』
「そっか。良かった。楽しみにしてるね。菖蒲!」
『元はと言えば太陽のせいなんだけどね』
「うっ…」
調子良いんだから。でも許しちゃうんだよね。こういう事してるからチョロいって言われるんだろうなあ。
「ねえねえ。やろうと思ってるダンス、どんな感じなの?」
『当日まで内緒。今は出来ないからね』
「出来ない?」
『そこも含めて内緒』
完璧に出来るまで見せたくない。しかも現時点ではうろ覚えだし。
『じゃあね。送ってくれてありがとう。また明日』
「うん!また明日!」
太陽が元気に帰っていく。なんか安心するんだよな。その後ろ姿。
『よし』
やると決めたからにはやらなきゃ。大会のための練習も、ミスコンの為の練習も、どっちも手は抜かない。それと、綺麗になる努力も。