第30章 Summer Dude〈栗花落 菖蒲〉
「僕だって、菖蒲にいつも助けられてるよ」
『うん…ちょっと休んだら、着替えて帰ろう』
「そうだね」
歩ける様になるまで少し休んだ後、更衣室へ行って着替えてきた。なんだか色んなことがあったけど、とても楽しかった。
『お待たせ。帰ろうか。そろそろ夕方だもんね』
「うん。大丈夫?」
『平気だよ。すぐに太陽が来てくれたからね』
「そっか。良かった」
『けど…手、繋いで良い…?』
恐る恐る見上げると、太陽はふっと笑った。
「勿論!」
『ありがとう』
差し出された手を握って歩き始める。
『結局太陽が泳げるのか判定できなかったな…』
「まだ言う⁉︎」
『なーんてね。まぁその様子だと泳げるみたいだし、今回は見逃してあげようかな』
「え〜…」
『また、来ようね』
「うん。いつかは剣城君や雪音ちゃん、それから天馬も誘って行ってみたいね」
『すごく賑やかになりそう』
きっとサッカー馬鹿の集まりだから、ビーチバレーなんかやったら脚で蹴っちゃうんだろうな。
「楽しみだね」
『うん』
それと…今年も開かれるあの大会。
『HLHIも、もうそろそろだね』
ホーリーロードハイスクールインターナショナル。高校生の世界大会、まずは選手に選ばれなくちゃいけない。
「絶対に選ばれてみせるよ」
『うん。世界にでっかく羽ばたいて。ちゃんと見てるから』
「絶対だよ!」
『はいはい』
世界大会ともなれば、かなりの苦戦を強いられるだろう。中学生の時のFFIV2は結局宇宙の戦いだったし…。それ以来色々あって正式な世界大会は開催されてない。
「また中学の時みたいにならなきゃ良いけど…」
『今度こそ、正式に選考されると良いね』
「早く世界の強豪と戦ってみたいよ!」
彼は本当にサッカーが好きだ。ずっと側で見てきたから知ってる。彼が世界で、彼の1番大好きなサッカーをできますように。私はその手伝いができれば良いな。彼の笑顔が好きだから。
『皆と…またサッカーできると良いね』
「うん。凄く楽しみなんだ。また、新生イナズマジャパンとしてプレーしたいよ」
『じゃあ沢山練習しないとね。私もダンス部として頑張らなきゃ』
私も、太陽ばかりじゃなくて自分の事に意識を向けなきゃ。部活だって、もうすぐ大会もあるし。私も、そろそろ変わらなきゃいけない時が来たんだ。